ふと、筋電位測定の回路を調べてみました。
その忘備録です。
※これは素人がとりあえず試した際のメモです。
はじめに
筋電位と書きましたが、正確には「表面筋電位」のことです。針電極やワイヤー電極のように体内に電極を入れるものではなく、皮膚の表面に電極を接触させて電位差を観測する非侵襲な筋電位の測定です[1]。単に「筋電位」と表す場合は、この「表面筋電位」であることが多いようです(「筋電位」で検索するよりも、「表面筋電位」と検索するほうがメディカル寄りの記事が多くなる気がします)。
今回やろうとしていることは、例えば instructables で「EMG (Electromyography:筋電図)」とか「Muscle Sensor」と検索すると出てくるようなものです(生体信号関連としては「ECG(Electrocardiogram:心電図)」「EEG(Electroencephalogram:脳波)」などがあります)。
[2]の筋電操作マリオなどがイメージしやすいかな。
この手の筋電位測定回路基板はSparkFunでも売っている[3]のですが、今回は秋葉原で割と手軽に手に入るパーツを使って組んでみることにします。
※人体に影響を及ぼす可能性がありますので、生体信号を扱う場合は特に注意が必要です。
回路
さくっと検索するといくつか回路が出てきます。 今回は筋電位測定と心電図測定の回路を検索対象としています(心臓の筋電位が心電図のはずなので)。おおざっぱに分類すると次の3構成がよくヒットしました。
・差動増幅回路(+DCサーボ) (心電図測定回路としてよく見かけるタイプ)[4]~[8]
・LT1167(とLT1112)を用いたLT1167データシートの回路[9] (秋月でICがそろう!)
・MiniBioMuse 関連[10]
多chで組む場合は1ch当たりの回路規模が小さいほうがありがたいのですが、 今回は作例の多さから1つ目の「心電図測定」系の回路を採用することにしました。 回路に詳しいわけではないので、作例の多さは大切です。
ざっくりとやりたいことを言うと以下の3点になるのですかね。
・mVオーダーの信号の増幅
・ただし商用電源のハムノイズが乗ってる
・信号の周波数はだいたい500Hz以下
で、組んでみた
[5]~[8]の回路を組み合わせて適当に組んでみました。回路構成や心電測定に関しては[7]がとても参考になりそうです(有り難い限りです)。
使用したOPアンプはNMJ072D(FETもののOPアンプ, 電源:±4V~±18V)。
電極には真鍮板を適当に切り出して腕にテーピングで固定したものを利用。
線材はテキトーな単線(シールド線ではありません)。
ちなみに一番最初の写真にも写っている小型ブレッドボードは aitendo で買ったもの。
電極の位置はどこが良いのかわからなかったので、とりあえず[6]を真似て、一番離れた個所(今回は手首)をG端にしました。
回路図(手書き!!) 即席電極
測定に使ったオシロはVDS1022I(25MHz2ch100Msps USBポート絶縁型, 秋月でとくに安くかえるオシロの1つです)。 出力端での波形とFFTしたもののキャプチャを、腕を安静にした時・腕に力を入れた時 それぞれについて以下に示します。
まず、ハム由来の信号成分が大きいことが分かります。また、力を入れると~300Hz くらいまでの信号レベルがなだらかに持ち上がっています。
もちろん、パッドの位置で得られる波形も変わります。 どこにパッドを置くべきか、いくつパッドをおけば腕の挙動を判定できるか、課題はまだまだ残りそうです。
安静にした時の出力波形(左図)とFFT結果(右図)
(きれいにハムが乗っている)
拳をぎゅっとした時の出力波形(左図)とFFT結果(右図)
(電源電圧が足りてないみたい...古い006Pだったからかな...)
いったん、まとめ
筋電位発生のメカニズムや回路の理解に不安が残るものの、とりあえずそれっぽい信号を計測することができました。また、おおまかにですが、扱っている信号の特徴が少し分かった気がします。次は、この信号の処理に取り掛からねば。 思った以上に基板面積も大きくなった(ユニバーサル基板なので余計に大きい)ので、別回路を採用して省スペース化も考えないといけないかも。
(OPアンプや筋電位について、あまりにも無知だなと実感。 ちゃんと勉強しよう...。 )
参考文献
[1] 酒井医療株式会社, " わかる!表面筋電図 今すぐ使える専門知識 "
http://www.sakaimed.co.jp/special/kinden/
[2] Gundanium, " USB Biofeedback Game Controller "
http://www.instructables.com/id/USB-Biofeedback-Game-Controller/
[3] SparkFun Electronics, " Muscle Sensor v3 - SEN-13027 - "
https://www.sparkfun.com/products/13027
[4] 安藤規泰,峯岸諒, ” 生体信号計測回路の製作 ”
https://invbrain.neuroinf.jp/static/moth/EMG-tool.pdf
[5] 上田智章, " 個人で試せる ! 生体センシング実験室〈第2回〉 ", interface, Jan. 2016
[6] 辰岡鉄郎, "脳/神経/筋肉の働きと信号計測 " トランジスタ技術, Feb. 2014
[7] 上田智章, " 【トランジスタ技術2006年01月号】『心電計の製作』私設研究所Neo-Tech-Lab.com "
http://www.neo-tech-lab.co.uk/Sensor/Electrocardiograph.htm
[8] 技術屋エンジニアリング, " 心電計の製作 "
http://www7b.biglobe.ne.jp/~gijyutuya/hard/2/main.html
[9] Linear Technology, " LT1167 - 抵抗1本で利得をプログラム可能な高精度計装アンプ "
http://www.linear-tech.co.jp/product/LT1167
[10] 長嶋洋一, " EMG sensor archive 筋電センサ関係情報 "
http://nagasm.org/ASL/CQ_mbed_EMG.html